舞を、影が覆い、鈍い音が、した。
「大丈夫か、舞!」
その声は、一瞬前、顔を思い浮かべた男の声だった。
「まさ……き……?」
「おうよ!」
その声と共に左手に蒼い炎が点る。金属の盾が消えていくのを見て、男は下がる。
舞は見上げた、ぼろぼろのジャケットに覆われた、厚く大きい背中を。その肩の上に、雅樹の笑みが現れた。
「なんとか間に合ったみたいだな」
「……遅いわよ」
「立ち上がれ……なさそうね、私にしがみついて」
気づけば、側にリシュネもいた。舞はリシュネに抱きつき、リシュネは右手で背中を抱えて走り出す。
駐車場の出口にトラックが止まっていた。だが、その周りに機動隊員が集まりつつある。
「雅樹!」
「こっち見るなよ!」
雅樹は手に黄色い炎を点す。それは空よりも強い光を放ち、機動隊の足を止めた。
リシュネはトラックの上に飛び上がり、舞を下ろす。雅樹も荷台の壁をよじ登り上がってくる。
見渡せば、ビルの敷地を囲むように機動隊とその特殊車両が並んでいた。それはさながら青い壁のようだった。
「雅樹、お願い」
「ああ、任せと……おい」
雅樹にしがみつくようにして、舞が体を起こす。
「これは私の役目だもの、このくらいは活躍させてよ」
舞の笑顔に、雅樹はうなずいた。
「橙炎――」
雅樹の背後に無数の炎が生まれ、
「掃射!」
それらが一斉に放たれる。公園の外、道路にそれらが着弾し、機動隊員は散っていき道を開く。
「先生!」
「振り落とされないでよー!!」
トラックは急加速し、敷地を出てドリフトしつつ車道へと出る。逃げ出した機動隊員の間を縫って、トラックが包囲網を突破していく。
『何やってる、そのトラックを止めるんだーッ!!』
ヒステリックな男の声がスピーカーから聞こえ、ゆっくりと金網の張られた青いバスが動き出す。
「空に潜む数多の粒よ、素から晶となりて薄布となれ!!」
舞は右手を高々と上げそう詠み上げれば、その特殊車両はおろか周囲百メートルを覆うように白い霧が立ち上った。
「行っけー!!」
舞が拳を強く突き出せば、それに乗ってトラックはさらに加速を増し、霧の中に消えていった。
「大丈夫か、舞!」
その声は、一瞬前、顔を思い浮かべた男の声だった。
「まさ……き……?」
「おうよ!」
その声と共に左手に蒼い炎が点る。金属の盾が消えていくのを見て、男は下がる。
舞は見上げた、ぼろぼろのジャケットに覆われた、厚く大きい背中を。その肩の上に、雅樹の笑みが現れた。
「なんとか間に合ったみたいだな」
「……遅いわよ」
「立ち上がれ……なさそうね、私にしがみついて」
気づけば、側にリシュネもいた。舞はリシュネに抱きつき、リシュネは右手で背中を抱えて走り出す。
駐車場の出口にトラックが止まっていた。だが、その周りに機動隊員が集まりつつある。
「雅樹!」
「こっち見るなよ!」
雅樹は手に黄色い炎を点す。それは空よりも強い光を放ち、機動隊の足を止めた。
リシュネはトラックの上に飛び上がり、舞を下ろす。雅樹も荷台の壁をよじ登り上がってくる。
見渡せば、ビルの敷地を囲むように機動隊とその特殊車両が並んでいた。それはさながら青い壁のようだった。
「雅樹、お願い」
「ああ、任せと……おい」
雅樹にしがみつくようにして、舞が体を起こす。
「これは私の役目だもの、このくらいは活躍させてよ」
舞の笑顔に、雅樹はうなずいた。
「橙炎――」
雅樹の背後に無数の炎が生まれ、
「掃射!」
それらが一斉に放たれる。公園の外、道路にそれらが着弾し、機動隊員は散っていき道を開く。
「先生!」
「振り落とされないでよー!!」
トラックは急加速し、敷地を出てドリフトしつつ車道へと出る。逃げ出した機動隊員の間を縫って、トラックが包囲網を突破していく。
『何やってる、そのトラックを止めるんだーッ!!』
ヒステリックな男の声がスピーカーから聞こえ、ゆっくりと金網の張られた青いバスが動き出す。
「空に潜む数多の粒よ、素から晶となりて薄布となれ!!」
舞は右手を高々と上げそう詠み上げれば、その特殊車両はおろか周囲百メートルを覆うように白い霧が立ち上った。
「行っけー!!」
舞が拳を強く突き出せば、それに乗ってトラックはさらに加速を増し、霧の中に消えていった。