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風雅、舞い - 第十六章 崩壊 (17)
「当たれぇ!!」
 少年は舞の横に立ち両腕を振り上げる。風が立ち上り降下する男達へと噴き付ける――が、それは頬を数丈切り付け、わずかに軌道を変えることしかできなかった。
 二人の男は舞と少年を囲むようにして降りる。男達は青い服の上に防弾ジャケットのようなものを着込んでいる。さらに、一人はジュラルミンの盾を構え、もう一人は右手が金槌状に肥大し灰色に変色していた。
「きつ……」
 心底そう思わせるのは、背後の少年だった。背中越しに、震えているのを感じた。少年に向けられた武器は、風の力ではたやすく止められない。眼前に迫る死の恐怖が体を硬直させていた。
「舞さん!!」
 俊雄の声、その足下にある清掃用の水道から水があふれ出していた。
「おっしゃ!!」
 かけ声と共に流れ落ちる水流が舞へと向かい、その数丈が弾丸となって二人を囲む男達に直撃する。金槌の男はさらに数発の直撃を受けてダウンするが、もう一人は手に持つ盾で防いでしまい足を止めることしかできない。
 少年は安堵から腰が砕け、その場でしゃがみ込んでしまう。
「ああ……ッ!?」
 舞はその少年を引き上げ、額に額をぶつけて睨み付ける。
「まだ終わってないよ!?」
「は、はい……」
 舞はにっこり笑って起きあがらせる。
「あともうちょっとだからがんばって! ちょっとそいつの相手しててね!」
「は、はい……へ?」
 舞は俊雄の方へと駆けていき、少年はそこに取り残される。そして背後には、盾を持った男。もう水流による攻撃はない。
「この……!」
「!っ」
 男は盾を振り上げ少年へと叩き付ける。それを防ぐ腕の動作が風を呼び、その風で男を押し戻す。
「く……」
 こいつが相手ならいけるのかもしれない、少年はそう希望した。
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