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風雅、舞い - 第十六章 崩壊 (16)
「こんなエレベーターがあったんですね……」
 隠し扉から入ったエレベーターは、舞達を乗せて降下する。カプセル二台と四人が乗れるだけの十分な大きさがあった。
「私もついこの前左さんから教わったんだけどね。図面にも載せていないって言ってたから、むこうにばれることもないでしょ」
「左さんもこれで逃げたのかな」
「……結白さん」
「はい?」
「改めて言うのもなんだけど……いいの?」
「あー、まぁ当然っていうか……リシュネも彼も、放っておけないし。おまけに木村君まで」
「はは……」
「ありがとう。正直、今回の計画はあなたなしじゃ成り立たなかったから」
「そこまで褒められると、何か欲しくなってきちゃいます」
「最大限の代価は支払う……って言いたいところだけど、会社がこんなじゃね。さて……」
 智子は声を潜める。舞も、俊雄も。少年はドアの側に寄り、耳をそばだてる。空気を通して外の声を聴く……少年は小声で「たくさん」と答え、全員がうなずく。
 エレベーターのドアが開くと、さらにドアがある。巨大な一枚扉の前に俊雄が立ち、指で三、二、一と作り、一気に開け放す。
 地下駐車場の巨大な防火扉が開け放たれ、集合していた機動隊が一斉に振り向く。その数三十強。
「風よ無数の羽音となれ!!」
「な!」
「イ”!?」
 少年が手を伸ばし念じれば、空気の鳴動が機動隊員の耳を叩き男達は崩れ落ちていく。
 その中で平然と立つ男が三人。
「くそっ!!」
 舞は左腕をその一人に向ける。手首から鮮血の一矢が放たれ、それは男の眉間を貫く――はずだった。だがそれは、男の右肩に当たる。
「なんで!」
 舞は分かっていた。自ら外したことを。殺してしまう、その恐怖が舞の手元を狂わせた。
 その隙を、残りの二人が飛び掛かる。一人は盾を抱え、もう一人は槌のような右手を振り上げて。
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