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風雅、舞い - 第十六章 崩壊 (15)
「……どうする? 強行突破しかないよね」
「待って。エレベーターホールまで行く必要はないの、その手前の角まで行けない?」
「敵はもう一人いる。全部で二人。攻撃の準備をしてる」
 リシュネが一歩進む。
「私が盾になる。みんなは先へ」
「追いつけるの?」
 リシュネは外を指さす。
「わかった。地下駐車場出たところで一度止まるから」
「了解。敵が出てくるところを狙いたいから、タイミングお願い」
 少年が耳を澄ます。
「敵は二人、後衛が撃ったら前衛が突っ込んでくる。後衛が撃つまで――三」
『力よ集え』
 手を構え、
「二」
『声を破となし』
 駆け出し、
「一」
『ブチ当て』
 振りかぶり、
「ゴー!」
『ろ!!』
 打ち降ろす!
 舞達がカプセルを押し出し、遠くの角から男が現れ、リシュネが術を完成させる。目に見えない壁が窓を割り壁を砕き、男を押し飛ばす。
 入れ替わり新たな敵。ジュラルミンの盾を前にしその姿は見えない。人のものではない脚力で跳ね上がり、リシュネの頭上から飛びかかる。
「止める!」
 叩き付けられる銀色の盾を両手で掴み、踏ん張り押し止める。床が削れ、焦げ臭い臭いがした。
 後ろを僅かに見る。角を曲がる音が聞こえた。
 その一瞬の隙に、リシュネの左腕が捕まれる。盾の横から伸びたその腕は、赤く、文様を描き、生物のそれでありながら、どの生物とも違う形状をしていた。蟹の爪に似ていたが、手首から肘にかけて長い突起が張り出していた。
 鈍い破裂。
 右掌から突如突き出した槍がリシュネの左腕を砕いた。上腕からちぎれた左腕が鮮血と共に宙に舞う中、リシュネは冷静に、足止めできたことを嬉しく思った。
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