KAB-studio > 風雅、舞い > 第十六章 崩壊 (14)
風雅、舞い - 第十六章 崩壊 (14)
「あのー……」
 全員が振り向く。自分を指さす俊雄がいた。
「そ、そうよ、木村君もAPなのよ!? 木村君はどうするの!」
「それは私が責任を持って面倒を見るわ!」
 そう言ってフィオは親指を立てる。
『お別れは済んだか?』
『え、パパ?……きゃっ!』
 フィオの言葉も聞かず、ロベルトはフィオを抱えて走っていく。
「え……」
『ちょ、パパ、パパ!!』
 暴れるフィオを抱きかかえ、ロベルトはあっという間に走り去った。
「……えーっと」
「まずいわね、機材が足りないかも……」
「…………」
 笑みを絶やさない俊雄だったが、口元はひきつっていた。
「とにかく今は急がないと。トラックにはあらかじめ最低限の薬を積んであるから1ヶ月くらいは大丈夫。時間が経てば経つほど突破しにくくなるから!」
 リシュネはうなずき、カプセルを押していく。
「みんなはあっちお願い」
 智子が室内を指さす。その方向にはもう一台カプセルが置かれていた。
「ディルトの……先生、ありがとう……」
「そう言われるけど照れるわね……それに、善意だけで助けるわけじゃないしね。まだまだ研究したいもの」
「そういう率直なところ、嫌いじゃな――リシュネ、前!!」
 少年の声に瞬時に反応し、リシュネは跳ねてカプセルの前に出る。数十メートル先のT字路、エレベーターホールから人影が現れる。
 カプセルの前に降りるリシュネは、壁。現れた男の腕から何かが放たれ、ぶれて見えるそれを正確に右手で、左手で、左足で弾き飛ばす。二つは窓を割って外へと消え、一つは壁に当たり割れた。
 リシュネが着地した時には男は角へと隠れる。リシュネは後ろ手にカプセルを押し止め、けして角から目を離さない。
「何……?」
「青い服を着ていた……警察かな」
「多分あれは……」
 壁に残った、弾丸の欠片をリシュネは取る。それは、生物の殻のように見えた。
「AW」
 検索