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風雅、舞い - 第十六章 崩壊 (9)
 舞が腕を振り抜き、水榴が3つ同時に飛ぶ。20メートル離れた場所に立つ俊雄に向けてそれは放たれ、加速する。
 俊雄はその3つの水榴を右拳で叩き潰す――つもりだったが、それは伸ばした手に当たり弾き飛ばされたようにしか見えなかった。
「何してるの、ガードしろなんて言ってないわよ!」
「いえ、僕はちゃんと叩いているつもりなんですけど……」
 フィオの叱責に俊雄は苦笑いする。
「神経系の成長が遅いのよね。身体強化の内、硬化を優先したからなんだけど、もう少しなんとかなると思った」
 フィオはため息をつき、ビデオカメラを下ろす。
「今日はこんな所にしましょ」
「え? 僕、まだやれますよ」
「無理だって、ほら右肘」
 舞に指摘されて初めて、右肘の皮膚にひびが入っていることに俊雄は気づく。
「APの身体強化は硬化と軟化のコントロールができて初めて成り立つわ。改良の余地はたっぷりあるってことね」
「まだ成り立てですし……?」
 気づけば、舞は俊雄の肘をじっと見ていた。そして、おもむろにため息をついた。
「はぁ……なんでこうなっちゃったのかなー」
「舞さんは気にしないでください、僕が望んでしたことですから」
「…………」
 そう言われれば、悪い気は、しない。しないが、納得もできない。
「なんか変なこと吹き込んだりしてないでしょうね」
 フィオを睨んで詰問するが、フィオは目を合わせず答える。
「マインドコントロールなんかしてないですよ、しているとしたらそれはあなたが、です」
「え”っ」
「?」
 舞は頬を赤らめ顔を背けた。
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