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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (9)
「こっちから攻めたいんだけど……舞の言ったこと否定するようで悪いけど、雅樹は手伝ってくれないと思う」
「う”」
 今ここにいない原因の半分は、自分にあるように舞は感じていた。
「ディルトも今は動けないし、彼も……」
 壁越しに、少年が座っていた部屋の方を見る。
「あの子、どうしたの? さっき会ったときも気が立ってたし」
「それは彼から訊いて。それが私と彼とのルールだから」
「ん」
 会ったときから冷徹さを感じていた少年から、最近は感情の起伏を感じるようになっていた。その原因であれば、きっとプライベートなことなのだろう。
「分かった。それはもう少し仲良くなってから訊くわ」
「ありがとう。というわけで、今ここで戦力になるのは私と舞くらい、ってこと」
「それじゃ攻められたらやばいね……」
「……」
「?」
 ふと見ると、リシュネが睨んでいるように見えた。
「な、なに? なんか気に障ること言った?」
「言った。舞にとってはここはただの場所かもしれないけど、私達にとっては――」
 リシュネは天井を見上げる。
 私達にとって、ここは――なんなんだろう。
「私達にとって、ここは多分……家、なんだと思う」
「家――」
 リシュネ達が眠るカプセル、メンテナンスをするスタッフ達、そういった体制が整っているこの場所。
 そして、左がいる、先生がいる、少年が居る、心休まる場所。
「だから、ここは決して譲れない」
 その譲れない場所を、左は、失ってもいいと言った。
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